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わびって?

お寺にいると特典もある。歌舞伎やら、展覧会やら、チケットを持ってきてくださる方がいるのだが、和尚様も体が一つしかないため、私たちにもまわってくるときがある。

「メイさん、明日休みやな」和尚様に言われ、「はい」というと、「ちょうど講演会の招待券があるから、行ってくるか」と聞かれたので、「はい」と2つ返事をして、もらってきた。

手にするまで何の講演会かもわからなかったが、よく見ると、禅と茶道について、長年修行されたお坊さんがお話してくれる会らしい。

会場に招待券を持って向かうと、30分前なのに長い列ができていた。(どんな話が聞けるんだろう)メイは、入り口に並びながら、久しぶりの講演会にワクワクしてきた。

壇上に立ったお坊様は、うちの和尚様の眼光するどい感じと違い、目元がやさしい感じの老僧であった。

「ここにたくさんのお茶人さんがいらっしゃる。みなさんが普段『わびだ』『わびだ』とおっしゃいますが、その『わび』とはどんなものですか?」

というお坊様の話に、(わびって言えば、そうだな、古い寺とか、質素なお道具とか、貧しい雰囲気の茶室とか・・・)そんなイメージが浮かんだ。

 「人間というのは、1つ得ると、2つ欲しくなる。2つ得ると、こんどは10欲しくなる。あれが欲しい、こうしたいと、煩悩に迷わされて、あっちゃ、こっちゃ、出かけ

右往左往

(

うおうさおう

)

。いざ死ぬというときになって初めて、自己を見つめ、いろいろ後悔する」

しかし、今からそういう自分自身を自覚して生きていくことが「わび茶」なのではないですか――と言われた。

自覚して、それからはじめて、そこから自由になれることができる。

さらに、その「わび」にさえ固執しない茶が、「わび茶」なのですよね、と語りかけてくださった。

(ええええ~侘び茶って、質素なお茶ではないのか。そうか、そうなのか)全部はわからなかったけど、お坊様の話で、自分や人間の中身を見る思いがした。

その帰り道、メイは廊下ですれ違ったおばさんたちの声にびっくりして足を止めた。

「私は、1つ得て2つ欲しいと思わないし」

「そうそう、私だって、あれ欲しいこれ欲しいとあっちこっちに出かけないわ」

「私たちは最初から違うわよね~」

あれ!? あの人たちって、ちょっと前のメイだ!!

(ちょっと前までなら、私もそう言ってた!自分は違うって。人間の根本の欲とか煩悩とか考えようとも思わなかった)

おばさんたちとメイ自身が重なった。

メイが3人、目の前で話してる・・・

あの人たちをこうやって見ることができたということは、少しだけメイも自覚できたということ?

メイも侘び茶の道を一歩進んだのだろうだろうか・・・。

【またつづく】

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