« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »

2009年4月

捨身飼虎図

今日の稽古に

出てきた茶碗の絵を見て

メイは首をかしげた。

ほとんど肉がない細身の人物が上衣を木に掛けている。

その右に、その人物が崖から落ちていく姿、

崖の下には痩せ細った虎の親子。

「・・・この絵はなんですか」

メイは飲み終わった茶碗を大切そうにかかえ、

内弟子先生をちらりと見てから、ご亭主役(稽古中)のナナさんに聞いた。

「え?捨身飼虎の図のこと?」

ナナさんは生粋の京都っ子で、アクセントもはんなりした京風。

知らないほうが不思議、というような目でこちらを見ているが、

メイは、それを聞いてもさっばりである。

「センセイ、違いますか?」

ナナさんは、流れるような京都弁でそう言いながら、

助けを求めるように先生を見た。

先生は、釈迦の前世の姿だと教えてくれた。

餓えた虎の親子を救おうと自らの身を与えたのだという。

その話を聞きながら、メイは茶碗の中の釈迦の前世という人物の顔をのぞいてみた。

穏やかだった。

とても幸せそうだった。

――虎を救ったのではなく、自らが救われたみたい

あっ、こんな風にお茶がしたい!

メイはそう思った。

自分のためにというのが一切なくなったとき、

というより、相手のためにというのも一切なくなったとき、

でも、自分ではなく相手のために何かできたとき、

ものすごく幸せな一服になるんじゃないかと思った。

”私は、このためにお茶をしてるんです!”

――何でお茶をしてるんだ?

前に、聞かれた時、メイは答えられなかった。

わからなかった。

ただ好きだったからだ。

でも、そう、これかも・・・

私にも何か、誰かのために、

できることがあるかも

それが私にはこのお茶なんだ。

この人が生まれ変わって釈迦になったのか・・・

このお茶碗で今日、お茶が飲めてよかった。

メイは名残惜しそうに、茶碗の正面を亭主に向けて返した。

【つづく】

にほんブログ村 その他趣味ブログ 茶の湯・茶道へ にほんブログ村 グルメブログ お茶・紅茶へ

読み終わったら、ブログ村もクリックくださいね。

| | トラックバック (0)

お寺の方が楽(2)

――そう、お寺の方が、俗世と切断されてますから、

それに、周りも修行者ばかりで、志あれば、かえって楽でしょう

(そうか!)

内弟子の先生は別にメイに向けて言われたのではなかったが、

メイの心にそれだ!だと響いた。

そうそう、そうなんだ。

こんなに厳しく自分を律しないといけない環境なんて、

ぐーたらメイには、日常の生活では作れない。

自ら型にはめるなんてできやしない。

だから、厳しい方が楽なんだ。

そうなんだ、メイは楽なんだ。

不思議だが、先輩方にものすごく、大変だ、可哀そうだ、と言われて、逆に気づいてしまった。

しかも、もやもやしてた言葉にできない思いが、

お稽古の先生の何気ない言葉ではっきり見えたのだから、

本当に不思議だ。

欲しい時に欲しい言葉って降ってくるものなのか、

メイが成長したからキャッチできたのか、、、

う~ん・・・

でも、それがわかったからといって、

お寺の暮らしが変わるわけではないんだけど。。。

(あいかわらず明日も怒られ、明日も苦しいだろう・・・)

それでも、すごく大変で、すごく辛いことに感謝できた。

【つづく】

にほんブログ村 その他趣味ブログ 茶の湯・茶道へ にほんブログ村 グルメブログ お茶・紅茶へ

読み終わったら、ブログ村もクリックくださいね。

| | トラックバック (0)

お寺の方が楽?

静岡の社中(稽古場の仲間)の先輩方が、

京都旅行に来ると、連絡があった。

6名のプチ団体旅行だ。

わざわざメイの休みの日に合わせ、

夕食をご馳走してくださった。

「お寺に居ると、こってり中華も食べれないでしょ」

「ほら、遠慮しないで食べて」

いつもは厳しい先輩方も、今日はすごくやさしい目でメイを見つめている。

「大変だよね」

「お寺ではいろいろあるでしょ」

中華の丸テーブルを囲んで、

ねぎらいの言葉をかけてくれる。

(確かに大変だし、いつも怒られてるけど)、

みんなが心配してくれれば、してくれるほど・・・

それ以上のものがお寺にある、という思いが頭の中にもやもやと浮かんできた。

半年たって少しだけ成長したんだろうか。。。

しかし、次の稽古、

先生が言われたことに驚いた。

――お寺の方が楽でしょ

「え?」

皆と逆の内弟子先生のお話に、びっくりした

と共にすごく納得した。

【つづく】

にほんブログ村 その他趣味ブログ 茶の湯・茶道へ にほんブログ村 グルメブログ お茶・紅茶へ

読み終わったら、ブログ村もクリックくださいね。

| | トラックバック (0)

« 2009年3月 | トップページ | 2009年5月 »