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2009年2月

突然の訪問者は「茶道内弟子修業日記85

メイは、玄関の戸の音の主を確かめようと、

蒲団から手を伸ばし、

襖(ふすま)の戸を少し開けた。

(京子さん?)

玄関の木戸のすりガラスごしに写っているシルエットは、京子さんにしては細長く、それに帰って来るのにはまだ時間が早い。

「・・・圭君?」

薄いスリ硝子一枚の玄関の戸は、鍵が閉まっていたが、声は筒抜けだ。

「メイさん、起こしちゃった?」

声はやっぱり、圭くんだった。

「風邪だって聞いたから、差し入れ。ここ置いとくから」

メイは意外な訪問者に驚き、布団から玄関の方へ思わず出て行った。

「ちょっと、ここ、男子禁制!それに土間掃除の時間じゃない!」

玄関先と言えども、見つかったら、圭くんがまたお寺に何言われるか・・・

メイは心配になり、声を荒げる。

「学校の帰りにちょっと寄っただけだし」

戸越しの圭くん声は、ぜんぜん気にしてない様子。

(わかってないな・・・誰もがちょっとのことで今の圭くんをよくない目で見るのに)

「また、がっかりした顔してるでしょ?」

「え?」

「わかるんだ、空気で。いつもみんなにそんな目で見られてるから」

圭君が急に語りだした。

「・・・この間も、その顔してた」

「この間って?」

「正月」

(あっ、圭くんの腕をつかんだ時のこと言ってるのかな・・)

「あれは・・・」メイがいい掛けると、

「わかってる・・・あれは、がっかりと同時になんか悲しそうな顔がわかった。心配してんでしょ」

・・・そう、圭くんは、そういうところ賢くて、ひとの微妙な表情とか心の動きとか、刺すようにわかるから、よけい辛そうに見えていた。

だから、彼がすべてに対して「無表情」でいることが、心の鎧の役割をしているんじゃないかと思うと、受けた傷や痛みが表にあらわれない分だけ深いんじゃないかと苦しくなる。

「いろんな学校から追い出されて、ここしか行くとこなくて、ここでも、大人だけじゃなく、はじめて会ったやつ、みんなそんな顔してくる。

話す気も起きなかったし、そんなとこ行ってもしょうがないからって思ってたし。寺の人たちだって、今少しよくたって、どうせ続かないって目でしょ」

圭くんの話を聞いて、自分も色眼鏡で彼を見てた一人だった、

それを彼も一瞬で見たことに気が付き、手が震えた。

(ごめん・・・)

「『露堂々』って、知ってる?

この間、お父さんが家に帰った時、掛け軸を見せてくれた」

ロ・ドウドウ・・・

圭くんは何を言い出したんだろう・・・

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