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2009年1月

突然の訪問者「茶道内弟子修業日記84

ん・・・朝日

ということは、お寺に行く時間だ

しかし、メイは立ち上がる力がなかった。

京子さんが玄関に下りてくる音が聞こえた。

(女子は、門前の離れ屋で寝泊まり、

2階は先輩の部屋、一階が新人部屋である)

メイははいずって、襖を少し開け、京子さんを確認した。

「京子さん、すみません、具合悪くて、立ちあがれません」

「一晩中、トイレと往復してはったもんね、今日は寝とき」

ぐったり・・・その声を聞き終わったとたん、

昨夜寝れなかった反動もあり、バタンと死んだように眠りにつく。

ふっと意識が戻ったのは、もう日が傾きかけたころだった。

ガタガタ・・・

戸を開ける音が聞こえた気がした。

「誰?」

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今目前を生き切れ「茶道内弟子修業日記」

「気を入れて拭け」

メイが少しふらふらしながら床掃除をしていたら、

和尚様の声がした。

「すみません、風邪みたいで、気持ち悪くて」

「そう思うから、フラフラするんだ、無視しろ」

「・・・」

無視って、、、メイはとりあえず、無視を試みた。

(気持ち悪くない フリ)

「弱ってると思ったら、余計に元気に振る舞え」

(そんな・・・)

微熱でも、すぐ寝ていたメイとしては、

悪寒で震える背中を無視し、

ムカムカと胃液が上がってくるのも無視し、

頭が重くなり、足も重くなり、フラフラしてくる視界を無視し、

とにかく、いつもより倍元気そうに床をふく。

和尚様は、それでいい、という感じで、その場を去ったが、

メイは勢いづいて、そのまま廊下の端まで、常よりハイペースで掃除を終えたのであった。

(意外と人間は倒れないものである)

もうやけくそで、この場で倒れてもいい、と思ったが、

ぼーっとした頭で、雑巾をちゃんと絞っている自分の手が視界に入ってくる。

視界が狭くなり、雑巾を絞る手しか目に入らない。

自分であって、自分でない気分だ。

なんとか持ち越し、

床につくなり、ウワーっと戻した。

(スミマセン、今回は汚れシリーズで)

朝まで何回も外のトイレを往復することになるが、

とにかく、掃除は完璧に、いやそれ以上にやり遂げたのだ。

いつもメイは、こんな風に、ちょっと弱ると、あと先のことを考えて、大事を取って寝てたが、

寺では、とにかく倒れるまで、本当にどうなるかわからない、とにかく今目前のことをやりつくしてから、、、なんだ

ということが身にしみた。

トイレと往復してたら、夜が明けた。

なんだか、メイは不思議なことに、

壁の板の隙間から入ってきた朝日をきれいだと思ったのだった。

(メイの部屋は、よく時代劇で見るように板一枚で外ですので、穴があいてるところから、風も”木漏れ日”(というほどいいもんじゃないが)も入ってきます!)

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お寺で風邪は存在しない!茶道内弟子修業日記

正月飾りもはずし、

お寺が通常モードに戻ってきた。

圭くんは学校が始まるので、お寺に帰ってきて、

逆に長男さんは、僧堂に入るので、家を出た。

家を出たといっても、ここは大本山の山内、

つまり、この山内にある修行専門道場に入ったというだけである。

(あとで、「だけ」とは言えない話を聞くのだが、またそれはこんどまとめて、、、)

稽古場も、「初釜」と言って、

今年初のお客様を招待する釜が家元で掛けられる。

まずは、ここの本山の和尚さま方が初日に招かれる。

和尚様は帰ってくると、笑いながら言う。

「また、初釜から坊主だらけで茶室に押し込められて、料理も精進とはあきるな」

これは、禅寺風のもの言いで、決してけなしているのではなく、

いわゆるユーモアなのだ。

(これを理解するまでは、どこへ行って帰ってきても、誰がきても、こんな調子なので、禅坊主ってなんでこんなに相手に厳しすぎるの、、、と思ったが、このような会話の仕方がどうも普通なのだ)

次に圭君のお父様のように、家元の文書を研究している方や特別な会員が招かれる。

圭君いわく、「いつあそこの茶会に行っても、私が行くと周りを学者をそろえてくるので、話がつまらない」と言っているそうだ。

(学者も和尚様たちとあまりかわらない感想!?)

そして、次に奥様とか、家元直門のお弟子さんたちが順に招かれるようだ。

「お包みは5枚でいいわね」

と和尚様に相談している。

(つまりお礼の額だ)

そして、帰ってきた奥様の感想は・・・

「大変だったんね」

どうしたんだろうと思ったら、

懐石料理をいただいて、中立をするときに一度露地(庭)に出るのだが、

そのとき、おもいっきり気持ちが悪くなり、全部戻してしまったのだという。

リアルに、語ってくださったが、ここに書くには忍びない内容もあるため、以下省略。

それでも、また席入りして、濃い茶を飲んできたのだという。

(茶会とは、そこまでして望むものか)

メイだったら、根性ないから、そこで断念して帰りそう。。。

奥様の話を顔をしかめて聞いていたメイは、

夕方近くになって、ものすごくだるくなり、夕方の床掃除のとき、吐き気さえしてきた。

(奥様の風邪がうつったのか、、、横になった方がいいかな)

しかし・・・

禅寺に「風邪」という言葉は存在しないのだということを、このあと、メイは思い知らされることになる。

 

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御節の不思議☆茶道内弟子修業日記82

御節の不思議

母は静岡から、新幹線で、お寺へ挨拶に来たが、

そのまま玄関より座敷に通り、

その他の年賀の御挨拶に来たお客さんたちに混ざって、

お茶を飲んで帰って行った。

メイが他のお客様と同じように、

母にお茶を出した時くらいしか、会う時間はなかった。

その夜、和尚様が夕食のときに言われた。

(ちなみにお寺の三が日はおせち料理で、

御節もまじめに食べると、

3日目には少しネバネバしてくるし、

残り物はほとんど練り物(かまぼこみたいなの)ばかりになってきた

「メイさんのお母さんは賢いな。

末席に座って席中は他の人たちを立て、

帰りにこちらに来て、「娘がお世話になり、ありがとうございます」とだけ挨拶したわ。

余分なことも言わず」

(そうなんだ・・・)

「一人で生きてこられたからでしょうね」

奥様が言われた。

メイ自身は父が早くなくなったことはあまり気にせず育ってきた。

母がそう感じさせてくれていたのかもしれない。

・・・それにしても、メイはどうしてダメなのだろう。

余分なことは言う、

逆に肝心なことはできない・・・

********

「これは、うれんな」

夕食を終えて、お重を下げた時、

長男さんが言われた。

3日でほとんどの御節を食べつくしたのだが、

家元出入りの有名な懐石料理屋製の御節だけ残っていた。

「毎年、毎年いただくので、ここでは一番人気ないんや」

ここのお料理はお茶の先生には憧れの高級料理なのだ。

(お値段も張るしね)

しかし、このお寺では、いつも食べているし、

大きな茶会や法事でお客さん用に用意した弁当などが余った時は、私たちで食べつくさなくてはならない。

賞味期限とか無視して、とにかく、全部なくなるまでは、同じものを毎日食べるので、飽きるし、

さらには、日数追うごとに味が変わってきて、

ここの料理というと、イコール残り物、イコール無理して全部食べつくす、というイメージが頭の中にできあがってしまっているのだ。

それで、なんともありがたいこの御重が最後に残るのである・・・

結局、最後に全部これを食べるきるわけなので、

無駄な抵抗なのであるが・・・

(お茶の先生方が聞いたら、びっくりするだろう)

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「なぜお茶をするの?」茶道内弟子修業日記81

「なぜお茶をするの?」

仲居さんの答えは、

「生きるヒントがあるから」

メイは・・・

お茶の先生になりたいと思ったこともなく、

(というより、人よりはるかに何をやってもダメなメイが、

茶の道を教えられるようになれるとは思わないし)

自分の修行だと思ってお茶をしていた。

(修行と言うとカッコよすぎるが、自分のだめなところや弱くて嫌なところが、茶をしていると鍛えられる気がするのだ。

それに・・・迷っても、悩んでても、どんなにへこんでても、

茶室に存在してると、本当に心が落ち着くのだ。

洞中の明というのかな、

光と暖かさに満たされる気持ちがするのである)

しかし、自分ばっかりではなく、

「伝えよ」という和尚様の言葉が響いてくる・・・

お茶の先生にはなれないだろうが、

何かメイが得れるものがあるなら、

それを誰かに分けることが

少しでもできたらいい・・・

それは思う。

メイはその分けれるものを、

お茶の中に見つけに行くんだ。

・・・それが彼女の言う「生きるヒント」

なのかな・・・

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茶道内弟子修業日記80

部屋に帰ると、

母から電話が入った。

「お正月だから、お寺に御挨拶行こうと思うけど・・・

正月もあなた帰ってこないし・・・」

心配そうな声、明日来るという。

「元気?体、大丈夫?」

「うん、もう鮭何匹もさばいてるよ」

「鮭?」

「そう、お寺に年末になると、いろいろなものが送られてきて、鮭も何匹も届くのよ、はじめて出刃庖丁使った」

太い骨とかも、ガンガンまな板叩いて、切ったし・・・

母を心配させないように、いろいろ珍しい話をひとしきりした。

家では、「あぶないから」と言って、油で揚げ物をすることもさせてもらってなかったから、母も娘の成長にびっくりしているようだった。

「ああ、内緒ね、京子さんがさ、お寺にお嫁入りするのが決まったんだって」

「へえ、家族に一人でもお寺に嫁ぐ人が出ると、親類一同がみな救われるって言うけど、メイちゃんもご縁あるといいわね~」

「人頼みね・・・」

しかし、メイは、どうも茶に嫁ぐらしい・・・

(とは、母には言わなかったけど)

「そういえば、桃仙院の和尚様がいらして、見事に京子さんを見て、『この人はお寺に嫁ぐ』って言われて、当たってたのよね、正月のビックニュースはこれくらいかな」

「え?桃仙院?それって、メイちゃんの名前をつけた時、見てもらった和尚様だわ」

「名前も見るの? なんて言ってた?」

「まあね~チイちゃん(妹)が生まれるときだったから、もうあとから改名するわけにもいかないから、遅かったんだけどね」

(何それ

結局、母は、話をはぐらかし、メイの名前について和尚様が何を言われたのか言わなかった。

電話を切る前、母はこんなことを言った。

「まあ、メイちゃんは、一生、茶道の修行に身をささげればいいと思うようになった、今は」

さんざん抵抗したけど、もうあきらめた、という言い方だった。

それが、あの和尚様が言われた内容と、同じだったので、また、あの和尚様を思い出した。

(いい目で伝えよ・・・か)

それが何かお茶と関係あるのだろうか・・・

ああ、お茶が一服飲みたい!

メイは頭が混乱すると、とにかくお茶をすることで解決できそうな気がするのだ。

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茶道内弟子修業日記79

【三が日の小さな事件】

元旦早朝の和尚さま方の正月挨拶回りが終わると、

三が日の間は、檀家さんやら、他のお客さんがたくさん、挨拶にいらっしゃる。

御菓子は、大徳寺弁当という縁高の菓子器に、

半紙を敷いて、

主菓子、干菓子、水菓子(干柿とか果物)や駄菓子も乗せて、

(お煎餅もあった)

とにかくいろいろのせて、出すのだ。

それで抹茶を一服点てだし。

一人、水屋で菓子の用意をしていたら、

後ろから、ツンツンとつつかれた。

振り返ると、

お寺に下宿してる高校生の”問題児”

圭くんだった。

(しかし、あの日以来、きちんと土間掃除の時間までには帰ってきていたので、もう、問題児とは呼ばなくていいだろう)

「今、母と妹と和尚様に挨拶に来たんだ」

「明けましておめでとう。御正月は家に帰れて、よかったね」

「う~ん、まあね」

あの日依頼、10も年下なのに、メイにはため口だ。

でも、これは彼にとって、心を開いている相手だけに対する言葉使いなので、彼らしい敬意の表し方なのだと感じている。

お寺の中で孤立してる彼にとって、

メイは(自称)母親代わりなのである。

他の人の前では、無表情の彼が、メイの前では、笑ったり怒ったり、いろいろな表情を見せてくれる。

「また、学校が始まるから月曜にはお寺に戻ってくるよ」

うん、とメイはうなづく。

「この菓子、出すの?」

「手伝ってくれるんだ」

「どうせ、今、座敷に坐ってるのは、うちの家族だけだし」

「じゃ、私、お茶出すね」

彼に続いて、メイも茶碗をお客さんに運んだ。

この3が日は、こんな風に、お客さんを座敷に通して、お菓子を出し、抹茶を出す。

奥様がお席に入って、相手をされていた。

メイがお茶を出して、頭を下げると、

圭くんのお母様も一礼された。

教育評論家というだけあって、知性や品性を感じる。

隣に座られている妹さんを見てびっくり。

(そっくりすぎ!圭くんの中学生版だ!)

顔だけじゃなくて、長身に細見、顔が小さくてモデル体系なところもうり二つだ。

(確かにお父様も時々、教育テレビで見るけど、リチャードギア似でカッコイイしね)

「圭くんが中学生になったみたい」

帰り際、また圭くんが水屋に顔を出したので、からかってみた。

すると、圭くんはいつもの大人っぽい表情に戻り、

「来年は、法律上も結婚できる歳になるし・・・

そう、さっき、母と妹に、”あの人と結婚したいと思ってる”ってメイさんを指さした」

「?」・・・今、なんて言った?

「妹が、『きれいな人だね』って」

あの・・・

「からかった御返しで、そんな冗談言ってるの?」

「いーや、本気だけど。

・・・母親にも『相手にされないでしょ』って本気にされてなかったけど」

(うそでしょ? ホントに言ったの?)

頭の中で、なぜそんなことを突然、圭くんが言いだしたのか、必死で考える。

「あ、もう帰んなきゃ、母が玄関で待ってる」

「ちょっと、待って

思わず、背を向けた圭くんの腕をつかんだ。

(なんて、細い・・・)

成長期の少年独特のやわらかく、もろそうな骨を直接、手に感じた。

メイでも力を入れれば折れそうで、圭くんの腕を通して、彼の「幼さ」をつかんだ気がして、さっと手を離した。

(まだこんなに子どもなんだ)

圭くんは、メイが言いたいことはわかってるけどね、という顔で、そのまま何も言わず、親と帰って行った。

このとき、まだメイは、このことを甘く見ていた。

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茶道内弟子修業日記78

「実はね、、、

私、結婚決まったん」

「え?」

「それが、四現院の若和尚なんね」

京子さんは、押さえて話しているが、とてもうれしそうだ。

四現院と言えば、

ふくよかで、しずかで、おおらかそうな30代くらいの和尚様、

よく、朝のお茶に来てた。

ここでは、朝8時から、茶礼と決まっているので、

この時間に合わせて、お客さんがいらっしゃることが多い。

でも、山内の和尚様がいらっしゃるのは珍しく、

四現院の和尚様くらいだった。

(そういうことだったのか・・・)

「来月結納なんで、和尚様と奥様だけで、

息子さんも知らへんの。

向こうも、まだ外にはお話しないようにしてるんやけど、

今日は、あんなこと言われて、ホントびっくりしたわ」

 ということは、

あの和尚様が言ってたことは当たってるってこと?

そうなると、

メイも茶に人生捧げるって

(それか茶農家とか茶人とかと結婚するってこと??)

当たるのかな?

結構いい加減に聞いてたけど、

改めて、あの和尚様が言われてたことを

じっくりまじめに思い出してみた。

~よく見て、よく伝えなさい~

そういうようなこと言ってたよな。

メイが「ガン」を持ってるとかも・・・

ここのお寺の「」っていう意味ならわかるけど・・・

(茶椀間違えちゃったから、すぐ見抜かれたかも・・・)

~見たものを、自分だけのものにするな~

って、それも言われてた、確か。

見たものを自分だけのものにしないって、

ううぅ どういうことだ。

京子さんの突然の告白で、

こっちもせっぱつまった感じだ。

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茶道内弟子修業日記77

「これで、全寺の和尚様いらしたね、

私たちもお茶にしましょうか」

奥様に言われて、

やっと和尚さま方へのお茶出しと言う緊張の時間が終わったことがわかった。

私達はいつも、朝のお茶をする四畳半に坐った。

「今日は掃除とか洗濯いいんですか?」

奥様に聞くと、元旦はしないのが習わしらしい。

それでも、四畳半にいつものように釜を掛けるのは、同じだ。

和尚様はまだ外回りなので、

奥様と息子さんたちと私たちだけのお席であったから、

なんとなくいつもよりゆったりしてる気分。

点前は、カワくんだった。

「今年は、桃仙の和尚様が一番だったわね、

賑やかな年になりそうね」

奥様が言った。

「メイさんは、はじめてやろ、寺の正月、和尚がたくさん来て、驚いたんやないか?」

長男さんに言われて、メイはうなづく。

「そういえば、あの桃仙院の和尚様が、

京子さんは、お寺に嫁いで、

私はお茶に嫁ぐとか?

言われたんですが、

茶の修行を一生続けろってことでしょうか」

メイがそう言うと、京子さんと奥様が目を見合わせた。

「あの和尚、そう言った?

ハハ、あの和尚の人相見は当たるって有名らしい」

三男さんが笑いながら言うと、

カワくんもお茶を出しながら、

「友達も受験の時見てもらって、

『一生、金に困らんので安心しなさい』って言われたらしい」

と、メイを見ながら言った。

「それって、何が受験に関係あるの?」

「その子は、落ちたんだけど、

きっと、和尚様が落ちるってわかってたから、

逆に違うこと言ったんじゃないかって」

「へ~」

「それで観光客があの寺は多いんや」

長男さんも話に乗ってきたが、

奥様と京子さんだけは、

下を向くようにお茶を飲んでいた。

「目が悪いとか、良いとかも言われましたけど、意味がよくわかりませんでした」

「目が悪い?」

「メイさん目が悪いんか」

「はい、でも、良い目だって言われて」

「そりゃわからんな」

「見たものを伝えなさいって、誰かに」

「ますますわからんな」

「そうなんです」

和尚様の話はこれきりだった。

茶碗をかたずけるために水屋に行くと、

京子さんに、袖をツンツンとされた。

「メイさん、言うとくわ」

なんとなくバツが悪そうな京子さんの顔、

はじめて見た。

(何何何???)

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茶道内弟子修業日記76

「もう!和尚様には天目茶碗を天目台に乗せて出すんでしょ!

表に出しといたのに、わざわざ奥の方に置いといた普通の茶碗で出すなんて、

メイさんの頭の中って信じられへんわ」

ガーン

(・・・そうなんです。

これが二分の一の選択肢でなくても、

たとえ100分の一であっても、

その少ない確率の間違いの方を選んでしまうのがメイなんです・・・)

どうもそういう星の下に生まれているのではないかと言うくらい、

ここに来て失敗ばかりである。

天目台に天目茶碗なんて、仏様に捧げられてるか、

稽古の特別なお点前の時にしか見たことない。

(本当に人間がこれで飲むとこ見たことなかったし)

「スミマセン・・・」

あっ、だからか!

それで、あの和尚様が、「菓子もおいしい、茶も美味しい」と、

京子さんとメイを両方大声でほめたのかも。

メイの間違いを笑って「よし」を出してくれてたんだ。

それで、茶碗を取り換えられる前に、

さっと飲まれたのかもしれない。

ああ、知らずに誉められただけだと、

(それとちょっぴり、おとそで能天気になってる和尚様だと)

単純に喜んでたメイが恥ずかしいし、申し訳ない。

穴があったら入りたいとはこのことで、

「もう、このお寺にも恥かかせたんね、

それもわかっとるん?」

「はい・・・」

京子さんに言われて、また小さくなる。。。

「もう、次は気をつけてね、またすぐ和尚様がたが来るから」

「はい・・・あれ?」

恐縮しながら茶碗をかたずけようと、手を伸ばしたときだった。

メイの目に数珠が、赤い毛氈の隅に残されているのが見えた。

「和尚様の忘れものでしょうか?

届けてきます!」

このときは、自分でも信じられないくらいの速さで、

数珠を握りしめ、勝手口を出て和尚様のあとを追いかけた。

(あ、まだ、そこにいる!)

まだ、黒い衣は角を曲がる前だった。

メイの駆け足に気づいた和尚様は、

すぐに振り返った。

「ふん、正眼を持つ娘が来たか」

「は?」

「その目で善いものを見たら、自分だけのものにせず、皆に伝えなさい」

和尚様はメイから数珠を受け取り、

よく意味のわからないことをメイに告げて、

(メイに言ったんだよね? たぶん・・・

さっさと次の塔頭の門に入って行った。

(そう言えば、さっきも「京子さんは寺に、

メイは茶に、なんたら」とか言ってたな・・・)

やっぱり、ほろ酔いなんだろうか。

でも、さっきと違って少しも笑ってなかったのが

メイにはますます不思議だった。

「あっ、ぼーっとしてる場合じゃない、戻らないと、また叱られる!」

メイはまたお寺の勝手口にに走った。

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茶道内弟子修業日記75

「こりゃおいしい!」

メイが京子さんに叱られるのかな、と思ったら、

いきなり、「あははは」の和尚様が

大声を出したのでびっくりした。

いつも冷静な京子さんまで、キョトンとしてる。

ごっくん

「菓子もよい、茶もよい。

ここの茶は山内一(さんないいち)だな!

ハハハハ

今日一番に来てよかったわい」

よく通る声で、24畳の大座敷の中で大太鼓のように響いた。

「最高、最高」

と、笑ってる。

そして、

「あんたは、よく気がつく。寺に嫁に行くかもな」

京子さんを見て言った。

そして、メイを見た。

探し物をするような目でじっと見られたメイは、

思わずじっと見返した。

「ほお・・・あんたの目は、澄んどる。

目は悪いだろうが、その大きな目は、真実を観る眼だ。

・・・あんたは、茶に嫁ぐだろう」

にやりと笑って、そのまま衣をひるがえして出て行った。

「こりゃ、今年もまた最高、ここの奥様は山内一だ、あっ、ハッハッ」

玄関で、見送る奥様をほめちぎって、笑い声が足音とともに去っていく。

メイの前に空の茶碗が、湯気だけたてて残っていた。

「あそこの和尚様はいつも、ああなんねん、とにかく褒めおる」

京子さんが言った。

メイには、すごく”和尚らしい”和尚様に思えた。

(褒めどころのないメイまで褒めてくれたから)

ほんの一瞬だったけど、あの方といる時間って、不思議な時間だった。

「そうや!メイさん、なんてことしてくれたん!」

あっ、やっぱり怒られるのか・・・

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茶道内弟子修業日記74

正月の挨拶回りの巻

「さあ、挨拶回りだ」

和尚様はそう言うと、衣をまとって御出掛になられた。

ここは大本山、山内(さんない)にはいくつもの塔頭と呼ばれるお寺がある。

そこを一つ一つ挨拶に回るらしい・・・

(ん? ということは・・・

そう、ここにも皆さんがいらっしゃるということだ

「あっはっはっ」

大きな笑い声だ。

「桃仙(庵)の和尚がいらしたね」

奥様が言った。

この声でわかるんだ~

すると、先輩の京子さんが、メイの手をつかみ、

「早く!」とうながした。

(何?)

メイはわけもわからず、水屋へ引っ張られるようについていく。

「ほら、お茶の準備!」

そっ、そうか、和尚様方にお茶出すのね。

「ぼーっと座ってないで、言われる前に、それくらい気づきなさい!」

「スミマセン」

ああ・・・元旦の朝から、京子先輩の厳しい御言葉・・・

今年もやっぱり、京子先輩に叱られ続ける予感・・・

「あっはっはっ」

声の持ち主は、座敷に坐ったようだ。

「今日は和尚様方は全部回られはるんで忙しいから、御菓子出したら、続けてすぐにお茶出して」

京子さんは、そう言って、菓子を運んで席に入った。

続けて、メイは即座にお茶を点て、席に運ぶ。

メイは和尚様にお茶を出して、深々と挨拶をする。

(新年最初のお茶出しは成功だ

そう思ってまだ席にいた京子さんの顔を見たら・・・

(え・・・

仁王様みたな形相である。

(なんてことしてくれたの

そう言いたそうな目に睨まれ、固まる・・・・

またメイは何かしちゃったのだろうか

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**********

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茶道内弟子修業日記73

御寺の元旦の巻

4時の初日が出る直前くらい、

一番しんしんと冷えるころ、

和尚様は本坊に初出勤された。

御帰りになられるのを待って、

私達は元旦の御節の用意である。

御節の御重を出すのかと思ったら、、、

ゆずり葉(この木の葉は、次世代の葉がでてきたら、その場をゆずるようにさっと落ちるので、新年にふさわしいということらしい)一枚を敷き、

その上に三種(数の子、黒豆、ごまめ)を乗せて、

和尚様がそれぞれの名前を書いてくださった箸袋に入れた箸を添える。

それで、屠蘇を皆で一献。

それから、雑煮(澄まし汁で、添えは大根と人参の短冊切り 紅白の取り合わせという質素だった)を食べた。

食事中は正座、

息子さんたちが

「食事終わるまでやろ」と、

御雑煮が終わると、足を投げ出した。

「梅が咲いたね」

和尚様が庭に目をやった。Plumblossom_beizjp_p01522

「梅花、雪に和してかんばし」

以前、和尚様が、厳しい寒さと調和して咲くからこそ、

梅の花は美しい香りを放つのだ、

修行が厳しいと思っていては花は咲かない。

その厳しさとも和していく、一体となったときにこそ、花が香るのだ、

という話をしてくださった。

それから、メイはとても梅の花がすきなのだ。

メイも、梅の花に目を細めた。

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番外編

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茶道内弟子修業日記72

「お寺の正月を一緒に過ごしますか」

奥さまに言われて、

メイは迷わずうなづいた。

僧堂(お坊さんの修行道場)と同じように、

夏と正月(冬)に休みをもらえるのだが、

正月に帰省するか、それとも正月過ぎてからにするか、

自分で選んでよいと言われた。

(まだお寺の暮らしに慣れてない・・・

家に帰ったら、そりゃ楽だろう、

でも、逆に、ここに居て、少しでもなじみたい)

そう思った。

本坊にある鐘、

毎日、冬は四時になると打たれるのだが、

大晦日は除夜の鐘を打つ。

まずは、これを体験した。

「煩悩を落とす音」だと言われた。

腹に響く。

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